おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

追憶と其の年月

彼女が表舞台を去った

年の頃になってやっと

ステージの隅に上がる鍵を手にした

そしてすぐにすり抜けていった

 

追い縋るほどに離れてゆくような

憧れとは本来そういうものだったか

 

懸命に生きているつもりだった

何者かにならなければ

決して愛されることはないと

夢想と焦燥だけの年月

 

気がつけば

世間からずれたような

取り残されたような

見目もよろしくなく

頭も虚ろな

人体がぽつり、という様

 

彼女の声を思うにつけ

あぁ自分の虚しさに染めてしまわぬように

其れは其れでとっておこうと

決めた