彼女が表舞台を去った
年の頃になってやっと
ステージの隅に上がる鍵を手にした
そしてすぐにすり抜けていった
追い縋るほどに離れてゆくような
憧れとは本来そういうものだったか
懸命に生きているつもりだった
何者かにならなければ
決して愛されることはないと
夢想と焦燥だけの年月
気がつけば
世間からずれたような
取り残されたような
見目もよろしくなく
頭も虚ろな
人体がぽつり、という様
彼女の声を思うにつけ
あぁ自分の虚しさに染めてしまわぬように
其れは其れでとっておこうと
決めた