おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

盆にも帰らぬ不幸者


盆にも帰らぬ不幸者

 

蛍、今宵は鳴く癖も

控えた町に静まって

昼間の汗をさます人

 

飾り棚には取り取りの

迎え果も花も色添えて

縁はつどい賑わいを

 

盆にも帰らぬ不孝者

待つ身の噎せは構うかと

夕凪、思いも暮れるころ

 

墓に向かえば列なして

潮香もかおれ

息紡ぐ者の支えを疾く運べ

 

花火、灯りも取り取りの

揺らせ鳴らせと地を打てど

伝手なき身にはなお遠い

 

盆にも帰らぬ不孝者

捻れ思いも煙の中

吹き消して早よ 早よ行けよ

 

水もするりと渡る人

来んね行かんね おらぶ人

導清らの憎いもの

 

飾り棚には取り取りの

送り菓も香も煙のごと

好いて供えも嬉しかよ

 

盆にも帰られぬ不幸者

伏して来ぬ日を待つよりも

宵を緩りと過ごしてよ