蛍、今宵は鳴く癖も
控えた町に静まって
昼間の汗をさます人
飾り棚には取り取りの
迎え果も花も色添えて
縁はつどい賑わいを
盆にも帰らぬ不孝者
待つ身の噎せは構うかと
夕凪、思いも暮れるころ
墓に向かえば列なして
潮香もかおれ
息紡ぐ者の支えを疾く運べ
花火、灯りも取り取りの
揺らせ鳴らせと地を打てど
伝手なき身にはなお遠い
盆にも帰らぬ不孝者
捻れ思いも煙の中
吹き消して早よ 早よ行けよ
水もするりと渡る人
来んね行かんね おらぶ人
導清らの憎いもの
飾り棚には取り取りの
送り菓も香も煙のごと
好いて供えも嬉しかよ
盆にも帰られぬ不幸者
伏して来ぬ日を待つよりも
宵を緩りと過ごしてよ