おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

なげくひと

空虚とは違うのよ

本当に本当に

生きているのか分からない

 

悍ましい

背筋を走る確かなのは寒気だけ

 

連れて行ってくれる手もないのに

ここに留まる力もなくて

不安で不安で仕様がない

 

思春期とは違うのよ

誰だってそうだって

慰めの言葉にもならない

 

痛ましい

風吹けば心がざわつく弱いだけの

 

認めてくれる目もないのに

生きていていいと思えるはずがなくて

いよいよ取り繕えない

 

空虚とは違うのよ

ただただ本当に

生きているのか分からない

海また海のバス道

帰りのバス

肩にもたれ掛かって

いつの間にか眠っていた

 

切支丹も隠れよう

入り組んだ急な山道を

 

騒ぐ皆の中で

眠り起きなかった

後から気づくものね

君が支えていてくれた時間に

 

カーブを過ぎれば海

また海

まるで此方が異様の町

 

幾つか教えてくれた

Bibleの話

後から分かってくるものね

 

泣いていたってすぎる夏

来年なんてない2人

 

峠には

一緒に暮らした人が焼かれた場所

見ないように見えないように

念じはよけい夢にくる

 

さらに下って海

また海

生きているかも朧な町

 

少し手に取って捲った

Bibleの記憶

後から後から追い来るね

 

涙こらえて宿す夏

未来なんて見えない思春期の

 

掴んだつもりが消える砂

酔うほど揺られたはずの道

夢に落ちるよ

すべて

 

人生の型どりを示しているかのような

 

カーブを過ぎれば海

また海

まるで此方が異様の町

 

幾つか教えてくれた

Bibleの話

歌と一緒に染み入ってくるね

 

それに泣いてもすぎる夏

来年なんてない2人

ゆられごころ

自分が生きるために縋ったこの人は

正しい人だと思いたい

そんなバイアスがかかる

 

そして鮮やかなまでの裏切りね

 

自分が育ったこの大地

正しい息吹と思いたい

何度も言い聞かせる

 

どして風に反して陰険な

 

傷ついても傷ついても

信じ続けた純粋が

今になって今になって

もう誰も信じられない種になる

 

近頃じゃ毒だなんだって

お盛んなことね

自分を理解したいと思いながら

簡単に語られたくないものよ

 

私が泣いて縋ったこの人は

優しい人だと思いたい

どしたってバイアスがかかる

 

それに気づきにくくて

薄々わかってても認めたくなくて

 

幾つか必死で美化した断片を

繋ぎ合わせて思い出に

無理があっても無理くりに

 

愛を受けた錯覚を

欲する場面も来るものよ

おさな情話

毒まみれの情話

お嬢ちゃんにはちょいとキツかったかしら

いずれこと切れるなら

今が丁度いい塩梅

 

悪い男に騙される

それで済めば上等

いつかあなたも見極める

その時にどうか健康でいてね

 

うす紫の汁を飲む

良薬でなくても口に苦し

土産にもらった菓子を取る

どうして与えられたら欲しない

 

思い出の爛れた道を

浸る間もなく逃げ帰る

どれだけ弱ってもふらついても

自分で自分を支えるほか

 

体力も気力も魅力も

いちばん良くて現状維持

時の人たちが輝くのは

そう見えていてほしいという願望

 

幻の見すぎで馬鹿になんな

お嬢ちゃんはおとなしく

風や木々など歌う情話

でいいわ

いつかの踊り場で

教室抜け出した
気の強い寂しがりが2人
もう青春とは遠い
屋上行きの踊り場で

泣いたりはしなかったな
機嫌良くもなかったけど
好きな本と
お気に入りのノート
やり過ごすには十分の

恋や愛なんかじゃなくても
同じ時間は築けること
チャイムにも気づかないくらい
じっとしてたよね

泣いたりもしたかったな
家と教室に居場所がないと
終わりのような町だった
なんとか隙間にすがりついた

示し合わせてもいないのに
屋上行きの踊り場で

恋や愛なんかじゃないけど
同じ時間に居られたこと
卒業して何年経っても
淡く思い出すようにできて

深夜主義

物語は
朝に始まり夜に終わる
その狭間を縫うように
真昼があり暮れ時がある

迷うな迷うな迷い込むな
美しいゴールで待ってるよ

ねぇそこにも入れてもらえなかった
深夜主義の子が1人

改札弾かれた勢いそのまま
しゃがみ込んで
不貞腐れて
明日待ちの歌を恨むよ

物語は
時を順繰りに辿って
しかしまるで真夜は亡き者のように

堪え性試されたかな
迷い込みな
どうせ無い時空で待ってるよ

ねぇどこにも入れてもらえなかった
深夜主義の娘が1人

仲間はずれの気分だけで
世の悲観までできるという

想像で落ちこめる力があるなら
それで賑わうほうへ
足を向けられないものかなって
やっぱり明るく歌われちゃ

恨むよ
いやでも

ねぇそれでも命にしたがった
深夜主義の子が1人

信号変わって足止めされて
そんなこともあるのに
不貞腐れて
明日待ちの歌をひどく恨むよ

はじめて

恋おぼえたローティーンの
目で追う先は駆け抜ける人
いずれ離れる年だとして
落ちるとは止むなきでしょ

チャイム鳴る放課後の
グラウンドはそのまま海続き
風吹けば泣いちゃうような
未練も純粋もここで作られた

息切らして追いかけるよ
苦しくても追いつきたいよ

たとえば瞳に映ることが
微か声が聞こえることが
どれだけ心高鳴らせるか
知らないでしょ
知らないでしょ

うまく運ばないローティーンの
日常は手探りとうらぶれ
もうすぐ離れる予感だけ
ちゃんと持ってしまうものでしょ

忘れないよに見つめるよ
知られないよに逸すよ

あなたの背越しに見る海は
見とれて気づかない海が
その向こうに行ってしまうから
好きだけど
キライなんだよ

今あなたの瞳に映ることが
あなたの声が聞こえることが
どれだけ私を励ますか
知らないでしょ
知らないでしょ

呼び呼び宵道

腹を減らして宵道を
あんたは1人で来んね来んね
祭りの気配も消えた頃
みんな油断しとるけんね

只々向こうに行くだけばい
なんの怖れることのなか
そいでも足の進まんなら
可愛がり兎も連れて来い

しゃらりんしゃらりん
昔の花街
あんたは意味も分からんろうで
しゃららんしゃららん
髪飾りの
灯り返して眩しかね

腹も空いたろ宵道を
あんたは1人で来たもんね
鈴もなおして帰りしな
すがる音もなかけんね

只々此処におるだけばい
海ん底でもなかもんで
知らん間に時が経つような
不思議もなかけん来いな来いな

しゃらりんしゃらりん
見たこともない
音がするとは愛嬌で
しゃららんしゃららん
好きなだけ
飲んで食うてよかろうで

人も減らして宵道は
とおりよぉなっとるけんね
あんたは1人で来んね来んね

日向の二度目の夢

日向で見ていた夢が
時を超え所も変え
ただ太陽ひとつに導かれて
よみがえりました

いとしギター弾きはもういない
蝕みつづけてた病も和らぎ
もう明日を見てもいいころ

日向で見ていた夢が
春に連れられ
よみがえりました

久し陽の下

陽の下は痛いくらい
きのうの雨がうそみたい
どうしたって乱高下
それなら皆巻きこんじゃうくらいの

うねりが欲しいね
ひとりじゃないなら
良くも悪くも

声の大きい人が去った後は
なんて気が楽で

また焼けちゃう痛いくらい
それがあなたの慕う夏でしょう?
もうひと雨あれば
いよいよの本番

愛されないこと請け合い
用もなくなった祭り
蛻の殻を一度見て
怖いなって思ったんだね

賑わいゆく中にひとり居て
覚えた乱高下