おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

秋宵

一気に暮れる怖ろしさ

つるべ落とす間もないのでは

 

お前を抱く秋宵の

夕餉前のお帰り

 

そっと戸口をさする風

嫌というほど噎せる月

 

おいでおいでも飽きたか

すぐに向かいたい

歯向かいたい落とし子の

 

暮れは暮れは

熟れた実を

そっと頬張れ

この地の暮らしに少しばかり

慣れてくれ

 

更ける気のない宵明り

夜長と読んだ人の才

 

お前に抱かれる秋宵は

ひと眠り前の風通し

 

すっと戸口を越える虫の音

明りだけでも届かせる月

 

見捨てたいのか

迎えか気紛れか

せめてもせめても

教えてほしい

 

宵は宵は

朽ちゆく葉を

戸ひとつ隔てて感じていたい

此方もすぐ行く

成れの果て

 

眠りつくまでは忙しない夜道

目覚めるまでは月に日に酔い

 

道はお前が作るより

幾つもあると

見えないものも

 

秋はまた

落とされるまで

日を日を少しばかり冷やしながら

過ごしてゆくようにできて

 

宵迎えればまた慄く

雁字搦めにお前を抱く

それが宵の役