おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

嘘と嘘のあいだに

寝雪ふかく

朝には気を失いそう

それは目覚めないということかしら

 

名を呼ぶのは恥じらいと

中合わせのことでした

冬の気にあてられて

生きているのやも判らなくなるほうが

温い部屋で潤けるよりいいわ

 

弔う積りもない癖に

匂う線香の禍々し

あちらと繋がっているなどと

此方の我儘に過ぎないのよ

 

寝雪ふかく

いつの間に

逝ってしまってもおかしくはないわ

 

目の前にそんないのちがあると気づき

無くなれば忘れ

馬鹿も呆けも是非もなし

あるは宴と花の盛りのみ

 

膿んだ肌身に堪えよう

肉を喰らって花を愛で

何様でもない癖に

何者かになった積り

 

晒し説法も知らぬのに

聞き覚えた節で遣り過ごし

明日は我が身の

天も地も

知らぬ地獄も

沙汰次第

 

喉に覚えた

温かな飯が通って行くさまも

胸に覚えた

刺す空気に晒されて

飲みこめぬ錘も

 

嘘と嘘のあいだには

必ず貴方が居たもので

違う教派の話をしても

いからず咎めずいるもので

 

寝雪ふかく

また気を失いそう