おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

最初の手紙

生きている感覚が無いのです

無力感や五感の話ではなくて

ずっとふわふわと浮いているようなのです

浮き世とは良く言ったものだと

感心する振りで慰めても

 

他の人も同じような構造なのかと

考えても考えても

例えば具に尋ねても知れぬものです

他人の頭の中は分からぬもので

だから他人と呼ぶのでしょう

 

自分だけの感覚だと

偉ぶりたいわけではないのです

不安になって怖くもなって

この感情すら疑うほどに

 

我思うの哲学まで訝しがって

私の頭は言うことを聞かないのです

 

考えに考え抜いたようでいて

何も残っていない数十年

思い悩んだはずだったのに

証も確信もない心身

 

考えあぐねているうちに

日は暮れ腹は減り

日々の暮らしに没頭しようと努めても

思考は止まぬものです

 

雨に喩え歌に擬え

生きてきた生きてきたつもりでも

何にも残っていないのです

 

感受が強いと言いながら

人に見えないものが見えると嘆きながら

悦に入っていただけで

それすら幻だったのかと

恐ろしくなるのです

 

生きている感覚がないのです

この文を認めている今この時でさえ