ベルは2回鳴って
しずまる
まるでそれで十分と
軽んじられた気分になったのも
昔のことに思えるわ
誰もしらない夜伽の合図
見慣れない千鳥格子羽織って
泣き真似は通じない
戸が開けば戻れない
ベルは耳に残って
もう夢まで侵食する
初めこそ魘されたけれど
思えばこれが夢ではないかと
言い聞かせる術になるものね
こうやって人は囚われた中で
どうやってどうやって生きようと
必死で齧り付くものね
西洋の在る地でも
そういう云いがあるそうよ
ベルは音を殺して
段々と私に迫る
いよいよ鳴らさなくたって
飼われるまで
あとひと刹那
宵はうずくまって
身ごと
しずまる