何者でもないという劣等感だけで
生きながらえているのは
なんたる皮肉か
夏の香をもたらす
しとやかなメロディーが
また抉りくる朝
大事なのは体裁を整えることじゃないけれど
それ以外に遣り様のない体になり
誰にも気づかれぬまま死んでゆくことが
いよいよ現実味を増したころ
朽ちる恐怖だけで
身はしゃんとしていたりするのも
生きづらいと簡単に云われる世ですから
ひっそりとしていましょう
本物はそうであるべきよ、なんて
そこで偉ぶっても意味ないけれど
夏の香にわずか彩られながら
何者でもないという劣等感だけで
生きながらえていくのね