おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

離れた潮目

花を供えるのはきっと出来る

幾らか金を握って買いに行くのも

鍵さえ見つかれば水も汲み

見おぼえた通りに出来るはず

 

ただその時の心持ちが

潮辺近くの風向きが

読めない見えない

 

未来事は憂うなと

あれだけ教わっても

振り解けないもので

想像だけで生きる者の日は暮れうる

 

車通りが多いとて

慣れてしまった道だから

通い思春の虚しさや

焼かれる場所まで道すがら

 

思わずにいられよか

仏より神より近くにおる

潮よ風よ

 

逃れられぬよう出来ているのは

死がそうであるように

生もまた

 

寂びた森道

辛うじてのコンクリート

遠く果てない遠足だった

潮目は大人になれば

すぐだったこと

 

怖くて怖くて泣いたもの

奇しくもあなたが去った冬

 

私が生まれる前に

先の戦で散った人の標も教えられ

必ず参ると

言われた通りに本当に思っていたのに

 

もうどうだっていい

離れれば 離れること許されれば

そこにおったのが怖かった

日常にとける潮目

 

墓は近く

人は遠い

花を供えるくらいはきっと出来る

けれど それくらいしかもう出来ない