おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

海前の灯火

さやけき音

また夏のめぐりを思わす

溶けぬよう慌てて

持ち帰る子の氷菓

 

海前にささやかな家を建てた

甲斐もあったね

だけれど この姿を見ることなく

口惜しいものね

 

柔き肌に赤い傷が

小さな額からは汗が

もうねこんなにはしゃぎ回るのよ

私ひとりの手には負えないわ

 

暮れてくれば凪がくるでしょう

灯火の用意をするわね

 

人の来ては騒ぎ去ってゆく

鬱陶しく思うことあれど

去ったあとの静けさには

一生を思わせることがあるわ

 

潮の目も変わりゆけば

幼子も指おれば

ほらね押し流されるように日々は

夏を送ることになるでしょう

 

宵深まれば波も暗がり

灯火の役目も消えるわ

 

海前の静かな部屋で

そっと眠るまで明るんでね