夜に爪を切ると親の死に目に会えないらしい
…なんだ、そんなことでいいのか
構わないし有難いくらいだ
黒い文字が薄く灰色にみえて
もう書も限られたかと思われた矢先
幽霊やら泥棒やらのほうが
よっぽど怖いから
口笛は吹かない
そこは素直に
冷たい水が脆い手に凍みて
また老婆のように皺れてゆくのだろう
そんな季節を
痛く感じている
言い伝えも
脅かしも
私には効かない
そう戦士のように言ってのけて
果たしてそれは
誇れるどころか寂しいことなのでは…
と思いかけてやめておく