おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

夏に散る

袖掴んで縋ったのが

僅か十二の頃だとは

なんと恐ろしいことでしょう

 

急な階段

墓参りの帰りはもう

煙に巻かれる

 

この土地では

花火をするの

派手な爆竹も風物よ

 

教えられて

目を輝かせていた

夏は散るのを待つのに

 

気づかないものね

袖掴んで

どうなっても良いと思ったのは

 

死に近い場所に来たからかしら

なんて、そんな深いことは

思ってなかったでしょうけど

 

思い出せもしない

その年端で

恋に似て死に似て縋ったの

 

節に魅かれて

夢一夜を口ずさんでいたの

ギターは弾けないけれどね

 

夏は散るために来るものよ

誰も知らぬうち浴衣の裾も

曳かれてゆくものよ

 

触れる肌があれば

それでいいの

あとは沈んでゆくだけでしょう

 

夏に散る

少女はひとつ

ものを覚えただけなのよ