おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

取るに足らない

幾らでも手にできた富を

手放した人がいたそうな

平屋育ちの憂き身には

理解できないものだったけど

 

棺から片腕出しておいてと

頼んだ人がいたそうな

結局は怖がられるからと

仕舞われていたそうだけど

 

何にも持っていないのよ

ほら

何にも持っていけないのよ

 

友引くと忌まれる日に

あえて送り出してくれ

習わしや思いこみに

囚われることのないように

 

そんな人がいたそうな

 

何でもないものだったのよ

もう

何でもないものなのよ

 

口伝えに此処まで届いた

何も持たぬと嘆く身に

これで良いわけはないけれど

辿ってきただけなのよ

 

辿っていくだけなのよ

 

何にも残らないからね

何かを残したいと切望しても

 

意味のないものだと知るまで

打ちのめされるまで生はあるかしら

 

何にも分からないものよ

そう

何にも分かれないものよ

自転と自念

地球は回っているとかいないとか

どちらでも構わないわって

投げた歌を

もう何年も前に書いた気がするけど

 

今私たちがこんなにも

ぐらつく理由をあなたの所為にしたい

 

都合よく

いいえ、都合悪くなったら

使おうとする悪い癖ね

 

バカと何とかは高いところへ

だから地べた這いつくばって結構

このほうが生きている感じがする

そういう遠吠え

 

今私たちは時を過ごすより

遣り過ごすほうが求められていて

 

理屈で説明できないことも

出てくるからね

どうか堪えないで

 

今私たちがこんなにも

ぐらついているのは

地の所為にしていいから

手すさびの庭

埋もれてしまった手すさびの庭

あの子の歌がきこえた気がした

草花に詳しくないくせに

此処を居にした報いがきた

 

武器を手に去った人は

穏やかな縁側を何より好んでいた

片や煮えたぎる

そして煮えきらぬ

憎しみ誹りを持った手は

 

ふと風が吹いたとして

それを感じて歌にする気こころなど

捨ててしまった

もはやなかった

あの子があの人が

いたから感じていただけのこと

 

掘り起こしても手すさびの跡

散らされることのない土が

恨めしくなる前には仕舞おう

雨でも降れば籠ってしまえるのに

 

確かに抱きしめてくれた手が

冷たくなることを知るくらいなら

私が先に

冷めた心の主が消えるべきでしょう

 

また風に押し戻されて

畳の縁につまずいた

痛くもないわ

もはや虚ろな生

あの子にあの人に比べれば

 

埋もれてしまった手すさびの庭

大事に育てる甲斐性もなくて

申し訳など立たぬもの

歌もきこえなくなりそうよ

You KNOW, All right, All right.

あなたは知っているでしょう

 

今胸にあるおもり

帰りの電車で

家についてからも

ベッドの中にまで潜りこんでくる

痛み苦しみと格好つけて名づけるほどじゃないけれど

詰まって離れないものが

 

いずれ薄れてゆくことを

 

あなたは知っているでしょう

 

もう向こう側へ行くしかないと

追いつめられた現実が

なくなるわけではないけれど

 

少しずつ上書きされていくことを

 

大丈夫

大丈夫よ

誰も言ってくれないから

この歌と一緒に唱えてゆきましょう

 

大丈夫

大丈夫だから

 

あなたの傷が糧になるからなんて

綺麗なことは言わないわ

私もそんなのは大嫌いだし

 

沈んだ心に似合わない

浮ついた格言は要らないわ

 

あなたは知っているでしょう

 

如何ともし難い時間を

幾つか重ねてきたのだもの

今あるおもりが

だんだんと軽くなることを

 

大丈夫

大丈夫よ

伝えておくわ

砂時計は気づけば

擦り落ちていて

誰彼問わず終えるもの

 

そうね

尊き天を描かなければ

遣り過ごせない苦に満ちて

 

歌を突き上げ

指交わらせ

どうか安らかをと

願うても

 

此方は思い描くよりも

耐え難い世界よ

それでも

伝える術ないから

 

偶に

生まれかえってゆくものもある

 

ただね、

1つルールとして

其れを表明してはいけないから

 

頭が沸騰するまで思い考えめぐらせて

それは気の弱り体の弱りと捉えられて

 

手続きがうまくいかないと

伝達がなされずに

気づかない魂もあるから

ただ弱いだけと落ち込まないでね

 

貴方もそんな1人かもしれないし

初陣かもしれないわね

 

その生を全うしろとは云わないわ

ただ貴方たちが思うほど

此方も気楽ではないのよ、とだけ

先んじた者として

 

伝えておくわ

眠りつくときには

髪も乾かさんとウトウトする子

まるで道化と見とれるよ

昼間の喧騒も気まずさも

飛んでいくわけでなし

だけと少し薄まって

 

いつか愛されますように

弱い体が治ることなくても

少しく強く生きられますように

あとはもういいの

 

揺り起こして髪乾かして

なぞればあの人に似た毛色

よかった見守る目があるわ

いつ消えてもおかしくない命も

ほんの少しずつ延び重ねる

 

surviver's high なんのその

沸きあがる間もなく繋ぐだけ

いつか愛されますように

此方が消えても続いてゆく

 

願うに堕ちて眠りつく

冬よ

春は

呼ばれそう高らかに

匂い増してくるわ

誰も彼も愛すその気を

謳歌して惜しまれて

 

片や

冬はもう耐えるだけ

辛いものだと思われて

早く過ぎるよう手を合わせ

結ばれやがて風に飛ぶでしょう

 

その気も削がれても

まだ居るための日を

誰かが愛でたなら

居心地も少しくいいでしょに

 

そんなところばかりに目が向く

昏くて結構

そういう者が幾らか

世に落ち生きている

それだけのことでしょう

 

冬よ

疎まれて生き延びる

早く過ぎてと祈りは満ち

幾つも追い払う邪念と苦

それを吞むように生きましょう

 

やがて明けるころ

必ずや惜しみ

また来る日を祈るわ

真冬の気と人々と

思うより冷えた夕

着こんでこなかったこと悔やむ駅

だけど余分は荷が増える

ちょうどよくは難しい

 

誰にでもある苦を

ひとつ、ふたつ、みつよつと負い

うまく話せなくなってゆく

頭のほうが早くまわって

 

久しぶりに会ったあなたに

もう会いもしないあの人に

あれよあれよといううちに

朽ちること知らせる真冬の

 

空が濁って怖かった

 

連れだって歩く人たちが

たとえばそれが恋人でなくても

にぎやかに揉める家族さえ

眩しくなるのはもう末かな

 

雪よ風よとその気より

人を見てしまう性を責めるように

また一段冷えて手は

赤い小傷を増やしてゆく

 

電話の先のあなたに

縁絶ちたいあの人に

そして自分がいちばんに

朽ちること知らせる真冬の

 

路は湿ってもう半ば

on your side

1度蹲ってしまったら

人生終わりのような気がするでしょう

無理ないわ

あなたの身こころにそぐわない星だもの

 

on your side

oh I'm on your side

 

どうせ死ぬまでの暇つぶし

それにしては長いんじゃない

その日その時懸命に

そんな心持ちにはなれないし

 

on your side

oh I'm on your side

 

説明つかない苦に耐える

その背が呼ばれる日までいるわ

あなたは何も間違ってない

on your side

たとえば何か間違っていても

I'm on your side

 

大丈夫よなんて軽々しい言葉

一番嫌いでしょう

とてもわかるわ

綺麗ごとじゃないから

 

on your side

oh I'm on your side

 

七転び八起き

衝撃が過ぎるわ

誰かがそれをできたとしても

塞翁が馬

それすら思えないわ

誰かはそれで生きられたとしても

 

on your side

oh I'm on your side

 

空を見ても希望湧かない

その目が朽ちるまで見つめるわ

あなたは弱くとても愛おしい

on your side

そうね強くでもなれれば儲けもの

I'm on your side

 

どちらにしても

大丈夫なのよ

 

幼い日から苦に触れて

ぐらつく足元

どうにもならずに

倒れそうなら横にいるわ

支えることならいくらでも

 

on your side

ただ生きてきたそれだけで

何と懸命だったことでしょう

誰も気づかなかったとしても

on your side

私にはわかるのよ

I'm on your side

 

あなたは何も間違ってない

on your side

たとえば何か間違っていても

I'm on your side

いろを見て振り返って

澄んだ思いはどこに忘れてきたの

たどれば誰かいるかしら

パンくず落としてきたかしら

 

ねぇねぇ野には何が咲く

どうしても風に逆らい

季節にかかわらず荒れている手

白いクリームはどこだっけ

 

うまく読めずに数えるヘ音記号

鳴らす前に口ずさむ指笛

下手こいたことばかりさ

枯れ野に何を呼んでいるの

 

船の底には何があったの

本当は覚えているでしょ 教えて

問いかえるおじいさんは生憎いないから

 

ほらほら雨が降り出す前

よくわかるのよ田舎育ち

急き立てられる前から来る不安

本当に果てる時はどうなるかしら

 

お箸どころかスプーンもうまく持てないんだから

誰が何を教えてくれたの

逃げ回った記憶しかない

1人でかくれんぼ鬼ごっこ

 

パンくずどこかにあるかしら