おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

彼女の背

髪結い

部屋を後にした

姿は美しかった

彼女になりたかった

 

追い縋る男の手を払うまでもなく

気で払う

なぜそこまで前を見る

風を切る

地球が味方するような

 

靡く髪も目も

細胞からほしくなるほどの可憐を

持っていながら要らないと言う

もっともっと前へ行く彼女は

憎いほどだ

手を取り引き摺り返したいほどだ

 

もう日も暮れよう

忘れて眠ろう

それもできぬほどの

 

面影

ドアを開けた

姿は美しかった

彼女を汚したかった

 

遠ざかる男の背を追うでもなく

足早に

なぜそこまで振り切れる

嘆かわしいことも霞んでゆくような

 

物言う声も目も

細胞から染みわたりとりつかれるような

虹を見ても辿れない地図

ずっとずっと奥深く彼女は

胸痛めて

滅びの言葉唱えたいほどだ

 

いずれ世も明けよう

寝覚めて叫ぼう

それはできるのかと