おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

罪のこども

のどの奥に痛みが走った

臥せても起きても

世は昏い

 

愛がそこにあるのを前提に

嘆く人たちは異星人

 

あぁ僕が

変わり者の側だった

綺麗に言うな

変わり者で済めばまだ

 

のどの奥は酷くいがった

毒も薬も似たようなもんだ

 

愛をうたう人が嫌いなら

もう追い出される側に決まっている

 

何にも悪いことしていないのに

世がこんな風になるずっと前から

罪をもって生まれたような

気がしていた

 

どこか痛むなら

それは報いだと

知らなくていい

自責に噎せる

 

のどの奥に痛みが残った

どうせ罪の子

世をはずれた子

 

春の世に隠れ

また言うことを聞かぬ肢体が

憎くなり

されど我が物

切り離すことできず

 

ただに嘆いて

春の日を暮らしてしまった

 

この陽気につられ

人々は花を愛で言葉交わして

日の下に騒ぐのだろう

 

また虚しくなる距離を捨て

もう知らぬ世のこととばかり

念じて念じて

食い止めた

 

だって素直に願っても穿っても

言うことを聞かぬ肢体が

我がに張り付いているだけで

 

誰が愛でたか春の世の

こんなに憎きといわせるな

閉じゆく季節

君恋しという齢はもう

とうに過ぎてしまったか

身体弱気は幼いころからといえど

此の頃はもう

思い通りの日のほうが少ない

 

あぁ痛むなら

引き換えにくれないか

ほんの少しでいい

 

あぁ熱なら

恋の熱さをくれないか

馬鹿のように火照っていい

 

君恋しと詠うのは

心の中で自由でも

もう決して口には

出せない齢だ

春気に障る

春の陽気が

少しばかり苦手に思える質

 

桜酒飲みは論外として

情緒すら苦しくなる質

 

突き詰めれば

もう儚むほか

なくなってしまうから

 

あまり考えないようにしよ

ということを考えてしまう

堂々巡るうち寿命もくるもの

 

誰のせいでもないけれど

昏きに落ちるものもいて

認めてくれとは言わないけれど

ただ春気に障るものもいて

 

好きすぎて疎むなど

不器用な彼じゃあるまいし

だけれど一緒くた受け止める

器量もないのよ

 

春の陽気が

やはり素直に吸えぬ質

 

散るなら散って

それでいい

後の掃除は任せてよ

声が嗄れているのに

ある日 気づいたけれど

なんてことないさ

すぐ治るだろって

思ってた

 

だって夏も秋も

憂鬱に青春に

相反するすべてが

押し寄せた年だった

 

しばらく経っても

声は戻らなくて

あんなによく喋り歌う子が

黙りこんだ

はじめてのことだった

 

女のくせに

声がかわいくないって

言ってきた奴がいて

 

今なら躱せることが

すべて刺さるから

もう声も出せなくなった

 

明日には治るだろって

願いかけて眠っても

おんなじ痛みが

まして増すような

 

歌を忘れたように過ごして

歌だけ忘れられずにいて

 

私の苦しさはいつだって

あの時に起因している

つむぎの歌

ひとつひとつ

数えてゆくように

細い弓を

編んでゆくように

 

誰にも見えないところで

泣き泣きに手動かす

確り者の

伝え聞き

 

つむぎの歌

 

うつろなころは

皆 春気に浮かれ

とりのこされた

ひとりぼっちが

 

誰にも見つからないように

泣き泣き袖ぬぐい

正直者の

また伝え

 

つむぎの歌

 

明日は陽気か

誰も知れぬものを

空に聞いて

知ったふりして

 

なぐさめ

いつかなくした思い遣り

ごった煮にして

飲みほして

明日にわすれる

 

つむぎの歌

記憶に添う人

もう堕ちる寸前の

うつろうつろには

夏夜の湿った空気が入る

 

そっと髪を撫でてくれることが

愛してるより嬉しいと

あなたは知らないだろうけれど

 

布団を深くかぶって

この世の恐怖をすべて避けた

記憶がどうしたって

逃れられず夢に見る

 

悲しい人生に添える手が

どれだけ温かいか

あなたは知らないだろうけど

 

これから幾つのものを返せよう

私が消えゆくまでの月日を

知らぬまま添ってくれる人へ

 

そっと髪を撫でてくれることが

愛してるより嬉しいと

あなたは知らないだろうけれど

 

後ろ暗さの如何

後ろ暗いことないのに

あるような気に

なるのね

 

教育のせいだと

謳う向きもあるのね

現代の根拠を持って

 

然し理由のつかない

後ろめたさが

あるのね

 

三つ子の魂の

言い伝えでも添えるけれど

説明つかない部分で

 

生まれてすみませんが

染みついて

いるのね

雨音

水音

 

予報で知っていた昼前からの雨

ならもう出かけるのは止めておこう

終始気だるい人生が

身体の思い生活が

余計に鬱陶しく思えたから

 

返す本もないし

呼ぶ人もいない

ただ自由過ぎる日に

雨の中に飛び込みたくないよ

 

そうやって

うつろうつろと四半刻ののち

やっとこさ起き上がって見たら

 

少し閉め忘れた蛇口から

ぽとぽとの水だった

受け止めてくれる腕があるだけで

花火は儚いほうが好き

だからね貴方に添いたくて

まだ耐えらえる弱りを

もういいかって寄りかかった

 

パチパチと閃光

遠くへと煙りゆく

もう僕は

受け止めてくれる腕があるだけで

 

死んでもいいと思った

 

暮れ時 汗が乾いても

昼間に受けた熱に酔い

昔耐えられた弱りを

もういいよねって縋りついた

 

パチパチと閃光

記憶でも煙りゆく

ほら僕は

受け止めてくれる腕があることで

 

生きていてもいいと思った

 

静かに暮れるなんて

情緒を知らない夏がゆく

人は騒がし

その真中にいて

 

どれだけ僕が弱ろうと

受け止めてくれる腕があるだけで

 

生きているのかもしれないと思えた